第21回石見国巡回講座に行ってきました!
2022年12月12日の日記 土橋由奈 特任研究員
先日、第21回石見国巡回講座が開催されました!今回は「石見・安芸の中世の鉄生産」をテーマに邑南町で開催。2年ぶりに対面式で行いました。
私もお手伝いとして参加しました。
講師は、比治山大学教授の安間拓巳先生。安間先生は古代の鍛冶遺跡研究の第一人者で、中世製鉄遺跡の研究も長年続けてこられました。
講座では、主に邑南町や安芸北部にある中世の製鉄遺跡についてお話いただきました。
石見南部・安芸北部には多くの製鉄遺跡が分布しており、中国地方における中世鉄生産の中心地でした。そのなかでも石見の邑南町・安芸の北広島町には製鉄遺跡が集中しており、地下構造、そして製鉄炉など各施設の配置も似ているそうです!石見と安芸、そんな共通性があったとは…
現在、安間先生が調査をされている北広島町の小見谷遺跡群の紹介もありました。中世の製鉄遺跡が集まっています。今は、遺跡群のうちの1つであるカミショウブ第1号遺跡の発掘が行われています。会場では、同遺跡を撮影した動画も観ました。
中世製鉄遺跡は、山の斜面を切って平らにしたところに作られるのが特徴のようです。カミショウブ第1号遺跡も山の中にあります。動画を観た印象ですが、生い茂る木々の中に突如現れる遺跡!という感じで、とても魅力的でした。自然の中にあるからでしょうか、どことなく神秘性も感じました…
安間先生は今回のような考古学の成果に加え文献史料の研究も重要視しており、遺跡と史料の両方から調査を進めていけば、中世における石見南部・安芸北部地域の歴史や人々の営みが復元できるのではないかと話しておられました。
石見・安芸の中世製鉄遺跡を通して、現代の行政区分からは見えてこない地域的な共通性の一端を感じることができ、興味深いお話でした。文献・遺跡調査のさらなる進展への期待が膨らみます!
ちなみに当日の会場では、邑南町教育委員会の皆さまのご厚意で同町郷土館に収蔵されている資料もお目見え(^∇^)
中国地方で鉄生産といえば近世たたら製鉄の印象が強めですが、中世、さらには古代という歴史の流れが存在していることを見落としてはならないと実感しました。「中国山地の鉄、奥深いなあ…」と、帰路の車内でつらつら思いをめぐらせる、そんな一日でした(^^) 今回の講座は、当ホームページで動画をアップロード予定です!ぜひご視聴ください。