風土記!風土記!!風土記!!!
2023年4月6日の日記 橋本剛 主任研究員
古代文化センターにおける研究事業の大きな柱の1つに、『出雲国風土記』の調査研究があります。今回は、その成果を3つ紹介したいと思います。
まずは、当センター開設当初から力を入れている写本調査。733年に完成した『出雲国風土記』の原本は、残念ながら今は失われています。しかし、写本という形で書きつがれて現代まで伝わっています。これまで、県内・県外を問わず100点以上の写本について、地道に調査を重ねてきました。
昨年度は、島根県立大学で勝部氏本という写本の調査を行いました。
写本のサイズを計測したり、状態を確かめたりしながら、1ページ1ページじっくりと観察していきます。この勝部氏本、写真では見たことがありましたが、ホンモノに触れるのは今回がはじめて。写真だけではつい見落としてしまっていたものも、今回の調査で明らかになりました。
この調査成果は、当センターの研究紀要である『古代文化研究』31号(2023年)に発表しました。近いうちにネットでもご覧いただけるようになる予定です!
成果の2つ目は、写本画像の公開です。風土記に関心のある方は日本全国にいらっしゃいますが、実際の写本を見るのはなかなかハードルが高いのも事実…。そんな方々のために、写本調査で撮影した画像をインターネットで公開していくことにしました。まずは島根県教育委員会所有の3点の写本の画像について、一昨年度から公開を開始したところです。
このたび、倉野家本と郷原家(ごうばらけ)本といういずれも個人蔵の写本2点を新たに公開しました。
写本の詳細・公開ページはこちら↓↓
https://www.pref.shimane.lg.jp/bunkazai/kodai/library/database/fudoki/
風土記研究において、どちらも大変重要な写本です。これらの写本がいつでもどこでも無料でご覧いただけますので、ぜひじっくりと観察してみてください。
なお、今後も所蔵者の承諾を得られたものから写本の画像公開を順次進めていく予定です。
最後に紹介するのが、『出雲国風土記―校訂・注釈編―』の刊行です。
詳しい情報はこちら↓↓
https://catalogue.books-yagi.co.jp/books/view/2368
本書は、『出雲国風土記』に登場する語句に詳しい注釈を施したもの。
2014年から刊行に向けた準備を始め、定期的に編集会議をおこなってきました。担当者が集まって“けんけんがくがく”議論を重ね、時には1つの語句の解釈をめぐって数時間頭を悩ますことも。その結果、注釈だけでも200ページ以上になりました。これまでの理解とは異なる見解を示した部分も少なくありません。
これに加えて、風土記の本文や読み下し文、第一線の研究者による最新の論考なども収めて、計700ページの大ボリュームです。古代文化センターにおける風土記研究の集大成の一冊ですので、ぜひご覧になってみてください♪
以上、最近の成果を3点紹介してきました。これらをご活用いただくことで、『出雲国風土記』の研究がよりいっそう盛んになることを期待しています。