研究員の日記

古代セン古墳調査チームの調査録 ~大草丘陵古墳群編~

2023年5月27日の日記  吉松優希 主任研究員

松江市大草町には驚異的な密集度の大草丘陵古墳群があります。大草丘陵古墳群は東百塚山古墳群や西百塚山古墳群などで構成され、東西900mほどの丘陵の端から端まで300基以上の古墳や横穴墓が密集しています。最近はめっきり聞かなくなりましたが、思わず「密です!」といってしまいたくなります。中には四隅突出型墳丘墓も含まれており、この丘陵が弥生時代後期から使われていたことが分かります。その後も古墳時代前期~古墳時代後期まで連続して、古墳や横穴墓が築造され、島根県でも最大規模の古墳群を形成しています。

さて、その丘陵の西端に所在する才光寺古墳群には、古墳時代後期に築造されたと考えられる才光寺K113号墳(方墳)があります。この古墳は分布調査で新たに発見された古墳で、横穴式石室を埋葬施設としています。大草丘陵古墳群の入り口から30分かけて山を上り下りして、ようやく到着します。 (最近の古代文化センターは山に登ってばかりですね笑)

才光寺K113号墳(立木の伐採で墳丘の形がとても良くわかります。汗だくになりながら伐採した甲斐がありました)

この横穴式石室は古くに盗掘を受けたようで天井石が破壊され、上から石室の内部を見ることができ、普段なかなかできない石室を上から見下ろすような状態になっています。石室の特徴から県内でも古手の横穴式石室の可能性があり、重要な古墳です。

才光寺K113号墳横穴式石室(写真奥が奥壁)

古代文化センターと埋蔵文化財調査センターの職員で構成された調査チームは、この古墳の測量調査を3月から実施しています。古墳や石室の測量といえば、手書きで等高線を引いたり、石室の図面をつくることがこれまでよく行われていました。今回は、近年、石室の測量に取り入れられている写真撮影による三次元の測量方法を用いて石室の測量調査を実施しました。またあわせて墳丘の測量調査も行っています。

カメラに向かってハイ、チーズ。ではなくて、墳丘の測量をしている様子です。

古墳の測量にも新たな技術が取り入れられ、私たちも日々勉強をしながら調査を進めています。蚊やマダニの恐怖におびえながらの調査もなんとかほぼ完了し、私たち調査チームは次の古墳を求めて別の山に登るのでした。

現在調査中の古墳からみた風景。調査の様子は後日ブログでお伝えします。