研究員の日記

橋の上の小さな玉ねぎ

2024年2月8日の日記  土橋由奈 特任研究員

皆さまは「擬宝珠(ぎぼし)(ぎぼし)」をご存じでしょうか。ちなみに私は、古代文化センターに入って初めてこの言葉を認識しました💦

こんなのです(この画像は松江城の西側にある亀田橋の擬宝珠です)。橋の欄干や建物にくっ付いている飾りです。

擬宝珠の由来は主に2つあるそうで、1つは、仏教における宝珠を擬しているという説、もう1つはネギの花を模して作ったという説です。

ただし、私個人としては、擬宝珠の形はどうしても玉ねぎにしか見えません。爆風スランプの曲に「大きな玉ねぎの下で」というのがありますが、この「玉ねぎ」は日本武道館の屋根の上にある大きな擬宝珠を指しているそうで…私はこの「玉ねぎ」だけはなぜか認識しており、擬宝珠を知った時にまず思い浮かんだのがこの曲でした。なので、私にはもう玉ねぎにしか見えないです。あと、ネギという点では本来の意味をかすっていないこともない気がします。

そしてこの玉ねぎは、街のあらゆるところに存在していることも、古代文化センターに来てから知りました。そのうちの1つが、橋の上です。

というのも、私は今、松江市で明治時代~平成まで美術鋳物を制作していた遠所(えんじょ)家という鋳物師について調べていますが、その過程で、遠所家が出雲地域の様々な擬宝珠を作っていたことが分かりました。そこで、せっかくなので研究の一環(?)として、松江市内を中心に橋の擬宝珠の探索をゆるりと始めたところです。

撮影した画像がぼちぼちたまってきたので、少し紹介させていただこうと思います。ただ並べても味気ないかなと思ったので、クイズっぽく並べてみました。どこの擬宝珠か考えてながら見てみてください。


1つ目はこちら。

松江市のどこかです。背景を頼りに考えるとわかりやすいと思いますが、擬宝珠本体もぜひじっくり見てみてください。

擬宝珠は基本青銅製です。錆びがいい感じです。木の欄干も雰囲気があります。イボイボは節で区切られ上は2段、下は1段。くびれの部分(欠首(かけくび)というらしい)は、錆び方も相まって、ネックウォーマーを付けているみたいで可愛いです。玉ねぎがツヤツヤです。

正解は…松江城の北側にある「宇賀橋」(昭和48年3月竣工)です。

なみに遠所家作品と思われます。ちなみに1枚目の後ろに映っているのは北堀橋で、北堀橋も遠所さん制作の擬宝珠だと思います。また、初めに挙げた亀田橋の擬宝珠もおそらく遠所さん作品です。宇賀橋とかなり似た形をしています。さらに、改修前の千鳥橋の擬宝珠も遠所作品なので、どうやら松江城周辺は遠所擬宝珠ゾーンだったようです。(改修前の擬宝珠はどこに行ったのだろう…)

2つ目はこちら。出雲市にある擬宝珠です。

1つ目と比べて形がかなり違います。こちらはイボが下部に1段、ぐるりと付いています。節のつき方も違います。玉ねぎはすっきりしていて、全体的にスリムな印象です。橋がそこまで大きくないので、欄干の幅に合わせた大きさになっているのだと思います。

こちらのありかは…出雲大社です。祓橋の擬宝珠(昭和62年11月竣工)です。勢溜の坂を下ってすぐの橋です。資料を見る限り、これもおそらく遠所さん作品です。

3つ目はこちら。松江市です。

かなり年季が入っています。欠首が美しいです。欠首に合わせて玉ねぎは下がすぼまっています。先ほどの2つにくらべて、胴がしっかりしている印象です。イボは2つ目の擬宝珠より少なめです。ど真ん中を囲んでいます。

正解は、佐太橋の擬宝珠(昭和37年竣工)です。佐陀川にかかっている橋で、佐太神社の鳥居の手前にあります。
遠所作品かは分かりません。外せたら、内側に作者の銘があるかもしれません。外してみたいなあ…

他にも、写真は撮り忘れましたが、松江大橋や天神橋など、松江市内の橋には結構な確率で擬宝珠がいます。皆さんも、松江を散策される際にはぜひ探してみてください。