神の籠もる山、仏経山に登る
【2021年11月27日の日記】 / 吉松大志 主任研究員
こんにちは。島根県古代文化センターの吉松です。
先日、『出雲国風土記』で「カンナビ」と称される仏経山に登ってきました。カンナビとは、神様が籠もる山という意味で『出雲国風土記』には4か所に出てきます。仏経山はそのうちの「出雲郡の神名火山」に当たります。
仏経山には、磐座(いわくら)という神様への信仰の対象となった巨岩があります。代表的なのは、「支比佐(きひさ)の大岩」と「宮隠(まがく)しの岩屋」です。これらは、『出雲国風土記』に登場する「伎比佐加美高日子命(きひさかみたかひこのみこと)」に関わる磐座と伝えられ、いずれも10m近い巨岩です。その前に立つと大きさと迫力に圧倒されます。
山中にはそれ以外にも「女男(めおと)岩」や「鏡岩」など岩の形になぞらえた名前の磐座が多数存在します。木々の中にそびえ立つ磐座は、神秘的な雰囲気に包まれます。日常の喧噪を離れ、なんだか心が洗われるようです。
古代の人びともこうした磐座の姿に神を感じ、神籠もる山・「カンナビ」と呼ばれることになったのかもしれません。
今回仏経山に登ったのは、しまこだチャンネルで公開予定のシンポジウムで使用する映像素材を撮影するためでした。
そのシンポジウム「神話と伝承から読み解く出雲世界」は日本書紀や古事記、出雲国風土記に記された神話や伝承また考古学の発掘成果から出雲世界の真相に迫る内容となっています。
現在、3月中の公開に向けて鋭意編集中です。当HPからご覧いただけますのでお楽しみに!
参考文献 原修二『仏経山の石神に魅せられて』(仏経山石神会、2019年)