研究員の日記

センター長だより3 建物探訪① 「松江市・八雲立つ風土記の丘」

2024年4月30日の日記  間野大丞 古代文化センター長

こんにちは。この4月からセンター長として赴任しました間野大丞(まの・だいすけ)です。よろしくお願いします。

前センター長のアクティブな「山ネタ」路線を続けるのは、体力に自信がないので、ライトな「建物探訪」に路線変更します・・・

第1回は、八雲立つ風土記の丘(松江市大庭町)にある二つの建物を紹介しようと思います。

まずは、公園内に復元されている竪穴住居です。木造平屋の一戸建てで、昭和47年(1972)に完成しました。

この建物は3月にリフォームされたばかりです。いいですね~。遠くからみても、屋根の茅葺き(かやぶき)が黄金色に輝いています。

地面を掘り下げて床をつくる半地下式の構造なので、居住スペースには入口から階段をおりて入ります。

外から見ると、なかは真っ暗に見えます。取材に行ったとき、怖がって中に入れない子供さんを見かけました。じっさい中に入ってみると、意外と明るくて、建物の構造や規模感がよくわかります。

この復元建物は、出雲国府跡で見つかった古墳時代中期の竪穴住居跡(宮の後地区SB023)をもとに建てられました。

発掘された建物遺構は、後世の改変などをうけて残存状態が悪いうえに、そもそもプラン全体を検出できていませんでした。

こうした困難な条件のなかで、復元設計にあたったのは、大阪市立大学工学部建築史研究室の助教授(当時)、鈴木充さんです。鈴木さんは、完全な形で残っていなかった出雲国府跡の遺構を解釈し、建物の骨格から細部まで詳細な検討を加え、復元案をつくられました。

時間も限られたなかで設計にあたられた鈴木さんのご苦労がしのばれ、頭が下がります。

復元建築のつぎに紹介するのは、鉄筋コンクリート造の現代建築、風土記の丘展示学習館です。この建物は、昭和46年(1971)に完成しました。設計を担当したのは、公共建築設計事務所長(当時)の八木章さんです。

八木さんは、この建物を「前方後方墳を形どった独特の構想」に基づいて設計しました。玄関ホールと事務室などいくつかの部屋で構成されるスペースが後方部、台形をしている展示室は前方部にあたります。

すべての外壁は斜めに立ち上がっています。屋上も後方部から前方部へと斜めに伸び上がっていき、一番高いところに展望台があります。

展望台には、外階段から屋上の中央を貫く階段を一段一段上っていきます。いいですね~。テンション爆上がりです⤴

展望台からは一大パノラマが楽しめます。眼下に公園内の復元建築と岡田山古墳群、その先には出雲国のカンナビ山のひとつ「茶臼山」と意宇平野、さらには大山まで見渡せます。じつは、この眺望と東方への視軸を意識して、建物の高さと主軸が決められているのです。八木さんの遺跡と景観へのリスペクトが感じられて、ほんとうに嬉しくなります。

今回紹介した二つの建物について、詳しく知りたい方は、『八雲立つ風土記の丘設置事業報告』 (島根県教育委員会 昭和48年刊行)をご覧ください。図面を見ると感動しますよ!

散歩日和になりました。現在、風土記の丘では企画展「古代の瓦と天蓋のかがやき」も開催中です。風土記の丘周辺に、ぜひお出かけください。