研究員の日記

隠岐国巡回講座を開催しました

2024年4月21日の日記  石山祥子 専門研究員 

新年度早々、26回目を数える隠岐国巡回講座を海士町で開催しました。この講座を海士町で開催するのは実に6年ぶりのこと。当日は時折雨の降るお天気でしたが、高校生を含む20名を超える方にご参加いただきました。

今回は出雲市にある古代出雲歴史博物館で開催中の企画展「誕生、隠岐国」(5月19日まで)にあわせて、講座も「誕生、隠岐国 ―天平時代の隠岐―」と題し、講師は当センター主席研究員の平石さんが務めました。今回の講座では、平城京のゴミ捨て用の溝から出土した荷札木簡(にふだもっかん)や税帳といった史料を用いて、会場となった海士町(古代には海部(あま)郡)を中心に、今から約1300年前の天平時代前半の隠岐国の人口や税について解説されました。

講座の様子

講座の後半は、ワークショップ「正倉院文書を読む」を行いました。このような内容でのワークショップは初めての試みだったので、会場の準備を終えた午前中、スタッフを受講者に見立てて、入念なリハーサルを行いました。タイトルには「読む」とありますが、ワークショップの中心は天平4年(732)の「隠伎国正税収納帳」という収支報告書を書き写すことでした。筆と墨で書くのはハードルが高いので、当日は筆ペン、マジック、鉛筆のどれかを選んで写していきました。写し終えると、この度のワークショップのために作った「隠伎国印」という約6センチ角の大きな印鑑を文書全面に押して完成です。文書の偽造を防ぐため、当時は作成した文面全体に押印していました。「隠伎国印」の実物は現存しないので、当時の正税帳に押された印影から復元したものを使用しました。

「隠伎国印」の印影(復元)

ワークショップを受講された皆さんにも、20~30分かけてじっくり取り組んでいただきました。今から約1300年前に書かれた文書の文字を一文字一文字書き写すことを通して、当時の役人の丁寧な仕事に驚かれたり、文書作成の大変さを実感されたりしていました。

ワークショップの様子
完成した文書に「隠伎国印」を押す

なお、前半の講座については夏頃にYouTubeで公開予定です!