わたしの「お宝」履歴書 2
2024年10月23日の日記 矢野 健太郎 専門研究員
島根県古代文化センターでは、考古、歴史、民俗など様々な分野の資料の調査をとおして島根の歴史や文化の研究を進めています。ちなみに私は古文書の解読などから歴史を考えることが専門で、昨年度より幕末維新期の島根の研究を行っています。
前回の「お宝」の古文書はあまり人気がなかったので、今回はちょっと違ったものを紹介したいと思います。今回の「お宝」は、スペインの8レアル銀貨です。 まずは銀貨の表面を見てみましょう。中央には当時のスペイン国王カルロス3世(在位1759~1788)の肖像と、その周囲には「DEI・GRATIA・1778・CAROLUS・Ⅲ」という、「神の恩寵による カルロス3世」を意味するラテン語と、鋳造年の1778が刻まれています。
裏面を見ると、中央にスペインの紋章、その周囲に「HISPAN・ET・IND・REX」という、「スペインとインドの王」を意味するラテン語が刻まれています。さらに注意深くみてみると「REX」の後ろに見慣れないマークが確認できるかと思います。これは「ミントマーク」と言って、この銀貨が鋳造された場所を示す印です。
では、このミントマークをもっと注意深く見てみましょう。このミントマークは、3文字のアルファベットが元になって作られています。さぁ、どの文字でしょう。お気づきになりましたか。
正解は
P T S の3文字です。
そして、このミントマークが示すのは、ボリビアの鉱山都市「ポトシ」です。この8レアル銀貨は、カルロス3世がスペイン国王であった1778年に、ボリビアのポトシで鋳造された銀貨であることが分かります。
このようにコインは小さいながらも、様々な情報が刻まれた「お宝」であるといえるでしょう。
さて、最後にポトシのミントマーク、一説には$(ドルマーク)の起源となったとも言われています。残念ながらお時間となってしまいました。続きはまた「次回」(あるかないかは、みなさんのリクエスト次第です)、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。